実験:セルバイオロジーとタンパク質精製
計画した実験を行う日にはすべてのツールが確実に機能することが必要です。細胞培養物を用いて経時試験を行う場合でも、タンパク質発現解析などのあらゆる実験を行う場合でも、信頼できるデータを得るためにはすべてのツールが完璧に機能しなければなりません。
アイディアを知見に変えるために、実験の実施と信頼できるデータの取得に役立つ細胞培養ツール・技術製品を提供します。
以下の項目をご覧いただけます:
- タンパク質精製と透析
- 分泌タンパク質との連動
- アプリケーションノート:哺乳類細胞の培養から純粋なタンパク質へSartoclear Dynamics®Labで細胞の回収時間を大幅に短縮
- アプリケーションノート:Sartoclear Dynamics® Lab Vキットによる哺乳類細胞培養懸濁液のラボスケールでの清澄化
- 迅速に細胞についての知見を得る
- 細胞増殖
- 細胞アポトーシス
- 細胞毒性
実験タンパク質精製と透析
細胞培養の目的がタンパク質精製である場合、1日の大半はタンパク質のろ過、精製、濃縮に費やされます。数日に及ぶ精製プロトコール中のいずれかの段階でタンパク質が分解、沈殿、または消失することもあるため、これらの過程は難関です。適切なツールを選ぶと効率が上がり、高純度の濃縮されたタンパク質を失う危険性が低くなります。
回収したタンパク質はプロトコールのあらゆる段階で少しずつ削り取られます。
- 細胞溶解時のタンパク質分解。細胞を溶解して上清を清澄化するのに数時間かかるため、タンパク質がプロテアーゼに曝露されて切断または完全に分解されることもあります。
- 濃縮中の乾燥。 精製ステップ成功後の濃縮での問題は些細なものと考えがちです。しかし予防策が組み込まれていない場合、サンプルの回転が非常に高速、または長時間だったためにタンパク質濃縮ユニット内でタンパク質が失われることもあります。
- 透析中の漏出。長時間かつ複数の段階に及ぶ透析中にタンパク質が透析バッグや透析カセットから漏れることがあります。たとえ完全にカセットからの漏出がない状態であっても、特に数日に及ぶプロトコールではタンパク質のアンフォールディングやリフォールディング、凝集、分解することがあります。特にこの最終段階でタンパク質が失われるのは苛立たしいものです。
タンパク質を完全な状態に保ち高速で精製できるソリューション:
アプリケーションノート
生物学的・医療用途に使用されるナノ担体の調製におけるザルトリウス限外ろ過製品 – ショートレビュー
このショートレビューでは、ナノ粒子の調製に関する最近の文献例を示します。特に、さまざまな細孔径(MWCO)を有するザルトリウスVivaspin®またはVivaflow®装置の限外ろ過を経て行われた濃縮・精製ステップに着目しています。
分泌タンパク質との連動
分泌タンパク質と連動させることで面倒な溶解プロセスを回避できます。さらに、精製時にタンパク質が細胞内プロテアーゼに触れることはありません。タンパク質が自然分泌されたものであっても、分泌タンパク質で細胞内タンパク質を最適化しHEK Freestyle細胞株などの最適化された細胞株で精製できるようにしても、さまざまな問題に遭遇することになります。例えば、比較的大量の上清から細胞を無傷の状態で分離し、タンパク質サンプルを濃縮しなければなりません。
分泌タンパク質を分離、透析、濃縮するためのツール:
アプリケーションノート
Sartoclear Dynamics® Lab Vキットによる哺乳類細胞培養懸濁液のラボスケールでの清澄化
この研究では哺乳類細胞培養上清をラボスケールで清澄化する新たな方法を評価しています。プロテインAのアフィニティークロマトグラフィーによるモノクローナル抗体の精製前にろ過工程を実施します。従来の清澄化工程では、遠心分離後にろ過するという時間がかかる手順で細胞を除去します。Sartoclear Dynamics® Lab Vキットは従来の清澄化工程と比べて大幅に時間を節約できる方法であるだけでなく、高速ろ過と併用することでクリアランス速度が向上することも認められます。多量の細胞培養液を清澄化するときに、Sartoclear Dynamics® Lab Vキットは標準的なラボ機器による測定に追加するものとして優れており、タンパク質精製前の生産性とスループットを高めることができます。
迅速に細胞についての知見を得る
細胞培養ワークフローの目的が細胞に関する生理学的情報を得ることである場合、細胞のイメージングと解析に適したツールが必要です。そのためにもっとも適したツールがあれば再現性が高く豊富な情報を得られる解析が可能となるため、迅速に結果を得ることができ費用対効果が高い方法で研究結果を発表できます。
細胞増殖
増殖は正常な組織の発生と再生に欠かせないメカニズムです。生化学的な細胞増殖アッセイは主に、DNA合成、代謝活性、ATP濃度に基づくものの3種類あり、通常は時間的経過を伴うデータを得るために併用する単一エンドポイントアッセイです。これらのエンドポイント測定は間接的で、形態変化からは容易に確認することのできないアーチファクトが生じやすい手法です。
生細胞イメージングでは、ラベルフリーコンフルエンス測定や蛍光ラベルによる細胞数の直接計測などの細胞増殖アッセイを直接インキュベータ内で継続的に計測できます。
細胞アポトーシス
アポトーシスとは、正常な組織発生と恒常性の維持に欠かせないプロセスであり、これにより細胞は適時にプログラムされた細胞死を遂げます。一般的なアポトーシスアッセイでは、プレートリーダーやフローサイトメーターを用いてカスパーゼ3/7の活性化やPSの外在化を測定する酵素アッセイが行われます。これらの一般的なアッセイでは、ユーザーが設定した単一のエンドポイント測定値しか得られず、アーチファクトにつながる可能性がある複数回にわたる洗浄過程や細胞の剥離が費用なうえに、バックグラウンドシグナルが経時的に増加するため長期測定に適していません。
ライブセル解析では、専用の試薬を用いて複数のアポトーシス経路を同時にリアルタイムで測定できます。その後、アポトーシスシグナルを位相差像と関連付けて、アポトーシス細胞死の生物学的かつ形態学的に明らかにします。
細胞毒性
細胞毒性とは、物質や環境の変化がセルヘルスに及ぼす有害な影響の総称であり、代謝活性を低下させ、細胞の増殖や分裂を阻害し、最終的に細胞死をもたらすことがあります。
多くの細胞毒性アッセイは細胞膜完全性の測定を行いますが、これらは健康な細胞に浸透しない染色色素を用いたものか、瀕死細胞から放出されるマーカーに基づくもののいずれかに大別されます。代謝活性測定も細胞毒性の計測に用いられます。しかし、これらのアッセイの中で瀕死細胞数を経時的に直接計測できるものはごくわずかです。
生細胞解析では、専用の試薬を用いて細胞膜完全性に基づく細胞毒性経路をリアルタイムで測定できます。瀕死細胞の核は、生細胞が取り込まなかった不活性色素を取り込むため、蛍光シグナルの上昇によって経時的に瀕死細胞を検出できます。その後、細胞毒性シグナルを位相差像と関連付けて、細胞死を形態学的に明らかにします。
アプリケーションノート
細胞培養品質管理アッセイ
アプリケーションノート:「細胞培養品質管理アッセイ」で、Incucyteを用いて日常的な細胞培養を記録・モニターし、細胞を用いるアッセイの品質と一貫性を向上させる方法についてご覧ください。