プラスミドDNA(pDNA)
プラスミドDNA(pDNA)は、遺伝子組換えタンパク質、ウイルスベクター、先進的ななバイオ医薬品の開発など、多数の遺伝子工学探求の重要な出発点です。遺伝子治療とDNA|RNA-based therapeuticsの継続的な進歩に伴い、臨床用に適した信頼性のあるpDNA製造プロセスが強く求められるようになりました。
プラスミドは細菌で発見された、天然に存在しているDNAの環状分子です。細菌のゲノムDNAとは独立して複製するという特性をもつことから(このような因子は「エピソーム」と呼ばれます)、遺伝子工学のベクターとして理想的なものになっています。 精製したpDNAは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)とレンチウイルスベクターの製造、mRNA製造工程のin vitro転写(IVT)反応、直接的な遺伝子導入などのプロセスにおける原材料として使用することができます。
ザルトリウスは、pDNA生産全体の効率的な製造のために、多様なツールを提供しています。 細菌の培養から最終ろ過までのプラスミドDNA製造工程と、各ステップでのソリューションをご紹介します。
pDNAは、そのサイズ、せん断感度、一部の夾雑物との類似性から、高収率での回収が難しくなることがあります。
- 高密度の細胞培養は、モニタリング、維持、回収が困難なことが多くあります。
- せん断力はpDNAを損傷し、沈殿したゲノムDNAを分解し、プラスミド抽出物を汚染する可能性があります。
- 大型のプラスミド(>6kb)の場合、細孔から十分に拡散できないことから、レジンのような従来の手法を使用した精製が困難です。
- 夾雑物(不要なプラスミドアイソフォームを含む)からpDNAを分離して均質な生成物を得るのは技術的に難しいことから、多くの場合、複数ステップのクロマトグラフィーが必要になります。
pDNA製造プロセス
大腸菌からプラスミド精製まで
目的の遺伝子をpDNAに挿入し、これを宿主となる細菌(一般には大腸菌)に、形質転換と呼ばれるプロセスを通じて、通常はエレクトロポレーションにより導入します。培養により宿主細胞は分裂し、プラスミドのコピーを生成し、目的の配列を高収率で得ます。 細胞が目的の密度に達したあと、回収し、pDNAを抽出します。通常はアルカリ溶解によって行います。このライセートを清澄化し、さらにクロマトグラフィーを用いてpDNAを精製します。最後に、プラスミドを濃縮し、ろ過した後、十分な純度を確保するために品質管理を行います。
pDNAのプロセスフロー
宿主となる細菌を増殖させ、何百万ものpDNAコピーを生成
プラスミド生産のアップストリームプロセスでは、均一な宿主細胞を用いてできるだけ多くのpDNAを生成することを目指します。増殖能が高く、短時間に高収率でpDNAを生成できるため、一般には大腸菌が用いられます。生産性の高いクローンを選択・使用してシードトレインを作ります。これにより、生産バイオリアクターに播種するのに十分な数の細胞が得られます。培養後に細胞を回収する際には、通常遠心分離によって行います。
宿主となる細菌を増殖させ、何百万ものpDNAコピーを生成
シンプルで信頼性のある方法で細胞増殖を最適化し、プラスミドの収率を最大にする、スケーラブルな生産プラットフォーム。
- 堅牢、制御可能、効率的な生産
- クロスコンタミネーションを避けるための無菌のシードトレイン
- 高速のフィードポンプ
ザルトリウスは、あらゆる生産規模の微生物培養に合わせた、様々なソリューションを提供しています。
Biostat® D-DCUは10~200 Lの容器サイズを備えたコンパクトなバイオプロセスシステムです。大腸菌の高密度培養(>50 OD)という要件を満たしています。
- 細胞増殖条件を最適化するための、プロセス全体に使われる独自の堅牢なフィルム
- BioPAT Traceとをはじめとする幅広いプロセス分析技術(PAT)を統合
- 迅速なプロセス開発のための、Ambr®から攪拌槽型リアクター(STR)までの柔軟性とフルスケーラビリティ
- Mycap CCX。フラスコを開閉したりバイオセーフティキャビネットまで移動させたりすることなく、細胞を増殖・継代することができる、細胞培養システム
- Ambr® 250。微生物培養に対応してプロセス開発を加速できる、シングルユースのマルチパラレルバイオリアクター
- 当社のGreen Lineシングルユース中空糸カートリッジで、高密度培養液からの細胞の回収をサポート
宿主細胞を溶解しpDNAを放出させる
細胞溶解の目的は、pDNAを放出させて細胞残屑とゲノムDNAを除去することです。宿主細胞を回収したあと、細胞ペレットをNaOH溶液で溶解し、その後酢酸カリウムで中和します。得られた沈降物には、宿主細胞タンパク質やDNAなどの不純物が含まれています。
pDNAからの最初の細胞残屑除去
アルカリ溶解から採取した材料にはpDNAのほか、宿主細胞からの夾雑物も含まれています。清澄化時に高密度細胞培養からpDNAを精製し、細胞残屑と不純物を取り除きます。
最高密度の細胞ライセートからでも不純物を分離できる、最適なpDNAの清澄化
- ツールは高粘性溶液でも操作できるものでなければなりません
ザルトリウスは、プロセス開発から大規模な商業生産までのアプリケーションをカバーする、幅広いタンジェンシャルフローろ過(TFF)(消耗品)を提供しています。当社の Green Line中空糸モジュールにより、特に細胞密度の高い環境での、細胞ライセート清澄化のためのフルスケーラブルなプラットフォームが実現します。中程度以下の細胞濃度では、Hydrosart® 0.2µm Microfilter メンブレンをお勧めします。
- メンブレンは分子量カットオフ値3kD~750 kD、ポアサイズ0.1 μm~0.65 μmを提供
- ガンマ線照射済み。シングルユースですぐに使用可能、装置セットアップに伴う時間とコストを節約
- 特に、高細胞密度培養液からの粘性ライセートに有効
- Sartopore® 2シリーズは最も幅広いPES膜の組み合わせを実現します。最低限のろ過コストであらゆる種類の生成物に完璧に対応します。
- ザルトリウスは、プロセス開発から大規模な商業生産までのアプリケーションをカバーする、幅広いTFFシステムを提供しています。当社のソリューションにより、シングルユースでガンマ線照射済みの流路を備えた、閉鎖系のソリューションを実装できます。
サンプルの容量を減らし、バッファーから低分子を除去
pDNAの生産には、pDNAの濃縮、夾雑物除去、バッファー交換のステップが不可欠ですが、pDNAはサイズが大きくせん断に敏感であることから、困難が伴う可能性があります。最新のイノベーションでは、低せん断性のオペレーションと完全閉鎖系の処理を組み合わせることで、封じ込めシステムにおける最高の回収率を実現します。つまり、pDNA製造に理想的な環境が作られています。
高感度の大分子に合わせた濃縮ソリューション
- 分解と回収率不良を最低限に抑えるための低せん断性
- 最大のコンストラクトでも最大の回収率
ザルトリウスは、生体分子の濃縮|バッファー交換・透析に適した、強力な製品ポートフォリオを提供しています。当社のGreen Line中空糸のシングルユース・フローアセンブリーは、pDNA濃縮のためのフルスケーラブルシステムです。
- 大型プラスミド(最大750 kb)のろ過をサポートするサイズ展開。30 kD~750 kDの分子量カットオフ値を推奨しています。
- ガンマ線照射済みですぐに使え、処理時間を短縮
- 低せん断性のオペレーション
プラスミドDNAの分離
バイオ医薬品であるpDNAには、純度、有効性、収率について厳しい要件があります。pDNAのキャプチャーはダウンストリームプロセスのひとつの重要なステップであり、pDNAを濃縮しながら大半の夾雑物を除去します。
大分子に適した、高い感度で低せん断性のpDNAキャプチャープロセス。
- 分解を防ぐための、効率よく穏やかな不純物除去
- サイズ制限のない捕捉法
HIP² Plasmid Process Pack™は、ザルトリウスの科学の専門家たちが開発した、pDNA精製のためのエンドツーエンドのソリューションです。
CIMmultus® DEAEカラムは、効果的なpDNA精製のための当社のプラグアンドプレイ・プラットフォームの第一ステップです。
- pDNAを濃縮し、宿主細胞タンパク質と他の核酸の大半を除去
- pDNAに対する高い動的結合能
- 低せん断力により最大のpDNA回収率
- 当社の詳細で分かりやすいプロトコルが、堅牢なプロセスの開発をお手伝いします。
- Allegroシングルユースクロマトグラフィーシステム は、パイロット生産、臨床試験製品の生産(clinical production)、商業生産用に設計されています。フレキシブルなモジュラーデザインにより、カラムとメンブレンのオペレーションをアイソクラティック、またはグラジエントの設定で行うことができます。
プラスミドアイソフォームを分離して均質なpDNAを得る
pDNAアイソフォームを分離するためにはもうひとつのポリッシングクロマトグラフィーステップを追加する必要があります。通常は開環状(OC)DNAと直鎖DNAからスーパーコイル(SC)pDNAを分離するステップです。医薬品として用いられるpDNAには、その純度、均一性、有効性について厳しい要件があります。またSC pDNAは最も安定性があり、効率的で生理活性を示すフォームです。
均一なpDNA抽出物を確実に生産できる、効率的かつ堅牢なポリッシングクロマトグラフィーソリューション。
- プラスミドアイソフォームの分離を行うのに十分な感度をもった分離法
ザルトリウスのHIP² Plasmid Process Pack™は、包括的なpDNA精製ソリューションです。CIMmultus® C4 HLDカラムはHIP² Plasmid Process Pack™の2番目のステップです。
- スーパーコイル(SC)pDNAから開環状(OC)pDNAアイソフォームと直鎖pDNAアイソフォームを分離
- 高い動的結合能と低せん断性による最大のpDNA回収率
- 柔軟性とスケーラビリティを実現
- Allegroシングルユースクロマトグラフィーシステム は、パイロット生産、臨床試験製品の生産(clinical production)、商業生産用に設計されています。フレキシブルなモジュラーデザインにより、カラムとメンブレンのオペレーションをアイソクラティック、またはグラジエントの設定で行うことができます。
サンプルの容量を減らし、バッファーから低分子を除去
pDNAの生産には、pDNAの濃縮、夾雑物除去、バッファー交換のステップが不可欠ですが、pDNAはサイズが大きくせん断に敏感であることから、困難が伴う可能性があります。 最新のイノベーションでは、低せん断性のオペレーションと完全閉鎖系の処理を組み合わせることで、封じ込めシステムにおける最高の回収率を実現します。つまり、pDNA製造に理想的な環境が作られています。
高感度の大分子に合わせた濃縮ソリューション
- 分解と回収率不良を最低限に抑えるための低せん断性
- 最大のコンストラクトでも最大の回収率
ザルトリウスは、生体分子の濃縮|バッファー交換・透析に適した、強力な製品ポートフォリオを提供しています。当社のGreen Line中空糸のシングルユース・フローアセンブリーは、pDNA濃縮のためのフルスケーラブルシステムです。
- 大型プラスミド(最大750 kb)のろ過をサポートするサイズ展開。30 kD~750 kDの分子量カットオフ値を推奨しています。
- ガンマ線照射済みですぐに使え、処理時間を短縮
- 低せん断性のオペレーション
分離したpDNAをろ過滅菌し、微生物汚染を防ぐ
微生物汚染を防ぎ患者の安全性を確保するためには、最終的なろ過滅菌ステップが重要です。革新的なリスク軽減策により、最終ろ過ステップからシングルユースバッグへの保管までのオペレーション全体の完全性が保護されます。
大型でせん断に敏感なpDNAにも使えるろ過滅菌ソリューション
- 高粘性溶液に最適
ザルトリウスはお客様のアプリケーションに最適な、最先端の滅菌フィルターを提供しています。 Sartopore® 2シリーズには、最も幅広いPES膜の組み合わせが含まれています。最低限のろ過コストであらゆる種類の生成物に完璧に対応します。
- 最終メンブレンに0.2 µm、または0.45µmのポアサイズをご用意
- 閉鎖系のシングルユースアプリケーションのために、フィルタートランスファーセット内で一体化
- Sartopore® Platinumは最終充てんに理想的な選択肢。最小の吸着を実現するPES膜表面の独自の改良により、高収率と信頼性のある完全性試験のための湿潤性の確保を促進します。
- Sartocheck 5は滅菌グレードフィルターの完全性試験のベンチマーク(基準)となっています。このユニットは、試験のための最高レベルの定量的リスクマネジメント(QRM)基準により、直観的で業界を牽引するデータセキュリティと完全性を実現するよう設計されています。
pDNA精製プロセス全体を通じて不純物の有無を判定し生成物を定量するためには、分析を行う必要があります。示している情報は、プロセス管理、堅牢性、高い製品品質を裏付けるものです。
pDNAサンプルの包括的な評価を行える分析ソリューション。
- 最終製品の全体像を短時間で提示
- 手間のかかる方法を回避
ザルトリウスはお客様のpDNAサンプルをモニターして管理するためのコンプリートソリューションを提供しています。
当社のCIMac™ pDNA 0.3 mL Analytical Columnsは、プラスミドDNAの高速かつ再現性のあるHPLCモニタリングと定量のほか、様々なプラスミドDNAアイソフォームの分離も対象としています。
- 主として、精製プロセスの様々な段階でpDNAサンプルのプロセス過程と最終管理用に設計されています
- RNAとエンドトキシンの有無の判定にも使用可能
- 高速・高分離能の解析
- フローに依存しない分離
- 高い感度と再現性
CIMmultus® HiP2 Plasmid Process Pack™
CIMmultus® HiP2 Plasmid Process Pack™
ご自身のpDNA精製プロセスを開発し、生産に移管する科学者をサポートするため、当社ではすぐに使えるpDNA精製パックを作成しました。HiP2プラットフォームをご使用いただくことで、たった2つのクロマトグラフィーステップ、つまり、陰イオン交換クロマトグラフィーとその後の疎水性相互作用クロマトグラフィーにより、効率的にpDNAを回収することができます。
- 効率性-大半の夾雑物(RNA、ゲノムDNA、宿主細胞タンパク質、エンドトキシン)を除去し、スーパーコイルpDNAを分離
- 迅速性-たった数時間以内でプロセスが完了するため、生産性が向上し製造コストが最小限に。明確に規定されたプロトコルは、堅牢な精製手順の迅速な開発に役立ちます。
- スケーラビリティ-モノリス型カラムのもつ独自の特性により、小規模な実験室レベルから大規模な商業レベルのpDNA精製に至るまで、各生産レベル間のシームレスな移管ができます。
モノリス型製品でどのようにしてpDNA精製のポリッシングクロマトグラフィーを行うか、詳細をご覧ください。
アイソフォームの分離を含め、すべての不純物への並外れた除去力で、高純度かつ均質なpDNAサンプルが得られます。
大型プラスミドでも、回収率と処理能力を損なうことなく高速で処理することができます。
ツールボックスにはすぐに使える2種類のカラムと、お客様のプロセスに手早く簡単に取り入れるための詳細なプロトコルが入っています。
CIMmultus® HiP2 Plasmid Process Pack™に含まれている製品
CIMmultus® DEAE
陰イオン交換クロマトグラフィー
CIMmultus®ジエチルアミン(DEAE)は、弱陰イオン交換クロマトグラフィーによりpDNAを濃縮し、大半の夾雑物(宿主細胞タンパク質、mRNA、ゲノムDNA)を取り除きます。
2ステップのプラスミド処理パックのうち、最初のキャプチャーを実行
清澄化後のライセートや他の精製法で部分的に精製されたプラスミドの処理に使用可能
pDNA分子への高結合能で、単一のピークに濃縮可能
ほとんどの不純物が結合しません(ただしRNAは、最初にNaCl濃度を上げたあとに溶出)
pDNAのサイズは制限要因ではありません
11 kb以上のpDNAには6 μmチャネルをお勧めします
どのように作用するのか
CIMmultus® DEAEにpDNA抽出物を添加したクロマトグラム。RNAや他の夾雑物からpDNAが効率的に分離されています。
疎水性相互作用
CIMmultus® C4 HLD
疎水性相互作用クロマトグラフィー
CIMmultus® C4高リガンド密度(HLD)ブチル修飾モノリス型カラムは、残っているゲノムDNA、エンドトキシン、開環状(OC)pDNAアイソフォームと直鎖pDNAアイソフォームを除去し、スーパーコイルpDNAを分離します。
2ステップのプラスミド処理パックのうち、ポリッシングステップを実行
高塩濃度でpDNA結合を強化
非DNA夾雑物の残りを除去
他のアイソフォームからのスーパーコイルpDNAの分離を促進
pDNAの精製は結合・溶出モードと試料置換モードの両方で実行可能
どのように作用するのか
CIMmultus® C4 HLDにキャプチャーしたpDNAを適用したクロマトグラム。夾雑物を除去し、OC pDNAからSC pDNAを効率よく分離することができます。
資料
4月 30, 2021 | アプリケーションノート
In-Process Control of pDNA Production on CIMac™ pDNA Analytical Column
PDF | 463.7 KB4月 30, 2021 | アプリケーションノート