遺伝子組換えタンパク質ワクチンのプロセス

遺伝子組換えタンパク質ワクチンは、業界でもその実績が認められています。始まりは1980年代中ごろのB型肝炎ワクチンであり、現在では世界中の定期接種に使用されています。これらのワクチン開発・製造には多数の障壁がありましたが、それらを克服することで、従来の製造方法からの移行が初めて可能になりました。 抗原を不活化病原体から精製するのではなく遺伝子組換えにより抗原を生成することで、高い発現量が可能になり、ワクチンの安全性も改善しました。

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遺伝子組換えタンパク質ワクチンとは?

遺伝子組換えタンパク質ワクチン、別名、遺伝子組換えサブユニットワクチンは、異種遺伝子発現系において生産することができる規定のタンパク質抗原を用いて製剤化されます。生産する抗原に応じて細菌、酵母、昆虫、哺乳動物細胞株、植物など多数の発現系が評価されることがあります。業界が今日抱えている課題は、これら各種発現系のスケールアップをサポートし、疾患固有の抗原に合わせたアップストリームプロセスを開発することです。

パンデミックへの対応を含め、業界に対してどう貢献できるでしょう?

遺伝子組換えタンパク質ワクチンがワクチン業界に革命を起こしたのは数年前のことです。これによって、これまで対応できなかったニーズに対応するワクチン開発が可能になりました。今日では既に、遺伝子組換えタンパク質はワクチン製品パイプラインの中の重要な部分を占めるに至っており、RSV、HIVなど多数の疾患に対する有望なワクチン候補のほか、新世代のインフルエンザワクチンも開発されています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの枠内では、30%以上のワクチン候補が遺伝子組換えタンパク質ワクチンのプロセスで作成され、そのほとんどはウイルスのスパイクタンパク質に重点を置いています。パンデミックの状況下でこのような実績のある戦略を用いるメリットは、既存の設備で製造可能な生産性の高いプロセスにより、安全なワクチンを製造できる、ということです。

ウイルス様粒子の成功

ウイルス様粒子(VLP)とは、本来の天然ウイルスの組成や立体構造を模倣しながらもウイルスゲノムをもたない、多タンパク質構造体です。タンパク質だけの場合と比べ、低い用量で高い免疫応答を生じさせることができます。VLPは、ウイルス構造タンパク質を個々に発現させることで生産されます。発現後のウイルス構造タンパク質が自己集合してウイルス様構造をとることができるためです。エンベロープをもつVLPは細胞からの出芽により集合しますが、一方非エンベロープVLPはダウンストリームプロセスで集合させます。細菌、酵母、昆虫細胞、植物、哺乳動物細胞株など多数の発現系を、VLPの複雑度に応じて使用することができます。VLPワクチンの成功例は、酵母を使って生産したヒトパピローマウイルスです。

遺伝子組換えタンパク質ワクチンはばらつきが大きいことから、あらゆる開発段階を支えるすぐに使えるプラットフォームは考えられません。そこで生産性の高い安全な遺伝子組換えタンパク質ワクチンの開発を可能にするには、革新的ソリューションを備えた戦略的パートナーが必要になります。

 遺伝子組換えタンパク質ワクチン

細胞株の開発

アップストリームプロセス(USP)

ダウンストリームプロセス(DSP)

その他の技術

実験計画法(DOE)や多変量データ解析法(MVDA)など高度なケモメトリックス法を用いることでデータの可視性が広がり、最終的にはコスト削減に加えてプロセスの信頼性と頑健性が高まります。

ニーズソリューション

クオリティ・バイ・デザイン(QbD)の実現は、重要なプロセスパラメータを理解するために多くの実験が要求され、実験の設計と計画の負担軽減に役立つツールであるDoEはそれを支援します。

プロセス分析技術では、分析が困難な大量のデータが生成される、相関関係を特定し、トラブルシューティングを行い、プロセスの理解を高めるために、過去のデータを評価するためのツールが強く求められています。 

ワクチン開発者やメーカーの多くは統計の専門家ではなく、ユーザーフレンドリーなインターフェースとソフトウエアに頼ることになります。

Umetrics® suiteは、プロセス開発者とメーカーのために設計された、ユーザーフレンドリーで直観的な3つのソフトウエアソリューションで構成されます。使いやすさと汎用性を最大化させる、ユニークなデータの可視化、広範なウイザード機能、カスタマイズ可能なプロットにより、データ解析を支援します:

  • MODDE®は使いやすさを考慮して設計された、高度で高品質なDOEソリューションです。 DOEの利点は、プロセスや製品の理解の獲得と最適な運用条件の推定にあります。また、MODDE®のグラフィカル・インターフェースと分析支援により確信をもった結果の解釈を可能にします。  
  • SIMCA®多変量解析(MVDA)ソフトウェアは、スケールおよびバッチ間の比較調査に使用されます。 SIMCA®はデータを視覚情報に変換することで解釈を容易にし、迅速かつ確信をもった意思決定や対応を可能にしますSIMCA® SIMCA®は、プロセス変動の解析、重要なパラメータの特定、最終的な製品品質の予測に役立ちます。プロセス状況の全体像を、数クリックで確認できます。
  • SIMCA®-onlineはリアルタイムの多変量統計的プロセス管理と制御を行うための効果的なソフトウェアです。 SIMCA® onlineは、生産部隊にインタラクティブで視覚的なモニタリングツールを提供し、バッチ及び連続生産の円滑な運用を確実なものとします。

これらのソフトウエアソリューションは、多くののザルトリウスのシステムに完備されており、スタンドアロンのプログラムとしてもご用意しています。

 

 シングルユースのセンサーを搭載したシングルユース技術の発展は、リアルタイムでのデータ収集と分析を可能にするだけでなく、プロセスの効率化、コンタミネーションのリスクの軽減、オペレータの安全性の向上、全般的な抗体価の改善をもたらしました。

ニーズソリューション

ワクチンメーカーは、非常に複雑かつ厳格に規制されたプロセスの深い理解とより良い制御を目指しますが、プロセスのモニタリング、設定値の制御(フィード制御とブリード制御)、イベントタイムの予測(収穫と遺伝子導入)、プロセス逸脱のタイムリーな特定を実現するには、重要プロセスパラメータのリアルタイムの測定が要求されます。

QbD原理の効率的な応用、製品の質と量における一貫性の確保、バッチ損失のリスク低減、プロセス逸脱の素早い特定・修正のために、様々な種類のPATセンサーが必要となるでしょう。

シングルユースシステムへのPAT統合機能は、サンプリング中の飛散と汚染のリスクを軽減するでしょう。

BioPAT® ツールボックスは、現在ラインアップを拡充している非常に価値のあるシングルユースセンサーです。ザルトリウスの製品全体に組み込まれており、ザルトリウスはPAT市場を牽引しています。

  • プロセス開発と製造テクノロジーで利用することで、プロセス全体の理解、モニタリング、コントロールを実現
  • ザルトリウスの製品と技術に完備されており、データ解析を簡素化  
  • BioPAT® Viamassで、生細胞密度のインラインモニタリングと自動セルブリードコントロール
  • BioPAT® Traceで、グルコースと乳酸のオンラインモニタリングと自動フィードコントロール
  • で、排ガス中のCO2とO2の濃度のインラインモニタリング
  • Ambr®とSTRバイオリアクターシステムにラマン分光法を統合したBioPAT® Spectroプラットフォームで、非侵襲的な複数分析対象物のインライン測定
  • BioPAT®シングルユースセンサーは、pH、伝導率、溶存酸素、流量、圧力などの重要なプロセスパラメータを正確にモニタリングするためのものです。これらのセンサーは、各ユニット操作の特定のニーズに合わせて、バイオプロセス・システムのザルトリウスのポートフォリオ全体に統合されています。

 

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